「がん」と抗がん剤治療

癌と抗がん剤治療

 

化学療法(抗がん剤)について患者が知らなくてはいけないこと

 

今日の日本のがん治療においては、抗がん剤治療を受ける患者さんは非常に多いと思います。
しかし、抗がん剤治療ほど、がん患者が「賢く」ならないといけない治療法はありません。

 

実は抗がん剤が「効く」がんはごく一部

「抗がん剤」というと「癌を治す薬」というイメージを持つ方が多いと思いますが、現実的には少し違います。

 

現時点(2015年現在)で「抗がん剤」が利く、つまり、抗がん剤で抗がん剤で「根治する」可能性があるのは、悪性リンパ腫と急性白血病と睾丸腫瘍くらいであることです。

 

■抗がん剤が有効とされる「がん」 

完治が期待できるもの 延命が見込めるもの
・急性リンパ性白血病

・急性骨髄性白血病
・悪性リンパ腫(Hodgkinリンパ腫、非Hodgkinリンパ腫(中・高度悪性度)、胚細胞腫瘍、絨毛癌

・乳がん

卵巣がん
小細胞肺がん
・髄性白血病
・非Hockinリンパ腫(低悪性度)
・骨肉腫
・膀胱がん
・悪性黒色腫

 

上記以外のいわゆる内臓にできる「固形がん」、
大腸がん、胃がん、肝臓がん
腎がん、胆道がん、膵臓がん

 

などについては、抗がん剤の効果は「治癒」ではなくあくまで「延命が期待できる・症状緩和が期待」という程度の効果にとどまります。
国立がんセンターなどでは、こうした固形がんに対して「抗がん剤治療単独では治癒が得られない。延命効果は得られるが、その割合は少なく、症状緩和、QOL改善が重要な治療目標となる」とされています。

 

しかし、現実的には抗がん剤治療による効果がさほど期待できない癌に対しても、病院から漫然と抗がん剤が投与されていたり、副作用の強い多剤併用療法が安易に試みられていることがよくあります。
重体の末期がん患者に亡くなるまで抗がん剤を投与し続け、むしろ副作用で死期を早めているのではないかと考えられるような使用例も珍しくありません。

 

「奏効率」100%の抗がん剤は100%がんを治す薬ではない

 

抗がん剤治療において、患者側にやっかいなことは、患者にとって「抗がん剤」が「効く」ということと、医者にとって「抗がん剤」が効くことが違うことにあります。

 

医師「この抗がん剤は奏効率100%です」

 

と言われれば患者は「これで癌が完全に治る!」と思ってしまうに違いありません。
(実際には奏効率100%などという抗がん剤はありませんが)

 

しかし、【奏効率】とは、抗がん剤を投与することで、「癌の消失・縮小が4週間以上続いた患者の割合」を示す指標であり、その後の患者の延命、長生きは一切勘定されません。

 

極端な例で言うと、
「抗がん剤を投与したことによって、1ヶ月間癌が「消失」。しかし、2ヶ月後、癌が10倍に増加。患者死亡」

 

このようなケースでは、患者の目線からすると「抗がん剤は効かなかった」とういことになりますが、医療的には、「4週間以上癌が消失」したという事実があるので、「有効な抗がん剤治療」だったということになるのです。

 

【奏効率】という抗がん剤の効果を表す指標が、患者の期待「延命・長生き」とはまったく違った見地から示されるデータかご理解いただけたと思います。

 

抗がん剤の効果指標については、以下にまとめましたので、ご参考ください。

 

 

抗がん剤の【効果指標】について患者が知っておくべきこと

 

【奏効率】

特定の種類の抗がん剤を投入されたがん患者集団のうち、完全奏功または部分奏功に達した患者の割合を【奏効率】と呼びます。完全奏功とは、画像診断でがん組織がすべて消失し、新たな病変がない状態が4週間以上続いたもの(完全奏功)。部分奏功とは、病変尾縮小が認められ、新たな病変がない状態が四週間以上持続したもののことを言います。

 

ただ、完全奏功したとしても、がん細胞が測定限界を超えて小さくなっていただけで、その後、癌が再度増殖するケースがほとんどであるため、高い奏効率の抗がん剤=延命を保障するわけではありません
【奏効率】あくまでひとつの目安として考えるべき指標です。

 

【無増悪生存期間・病勢無進行生存期間(PFS)】

病変・がん細胞が進行せずにおとなしくしている期間。ただ、【無憎悪生存期間】が延長しても、延命に必ずしも繋がるとは限りません。
【無増悪生存期間】あくまでひとつの目安として考えるべき指標です。

 

【生存期間中央値(MST)】

がん患者の追跡調査の結果、がん患者の集団の半数が死亡するまでの期間を生存期間中央値といいます。
【生存期間中央値(MST)】は抗がん剤の延命効果、【患者の期待する抗がん剤の効果】を意味するもっとも適した指標と言えます。

 

 

さて、癌を縮小させる効果を意味する【奏効率】が、【延命率】に繋がらないのは、三つの理由があるからと考えられています。

 

がんが「消えた」とは、あくまで「機器の測定限界」を意味していること

 

奏効率で言うところの「がんの消失」、医療用語では「完全寛解(CR)」といわれますが、これは本当に「消えた」わけではなく、「機器の測定限界以下」になったことを示しているだけだからです。
つまり、「機器に測定できないレベルの小さな癌」はたくさんあるわけです。

 

この機器に測定できないレベルの小さな癌というのはおよそ1ミリ程度と言われています。
一ミリ程度の癌には「1,000万個」の癌細胞の集まりです。

 

ですので、「完全寛解(CR)」したとしても、実際は小さながん細胞が数多く体内に残っており、「癌が治った」ということに繋がらないのです。
そして、この1ミリ程度の癌は、抗がん剤が効かなくなった際、一気に増えだすのです。

 

抗がん剤はいずれ効かなくなる

抗がん剤が効かなくなったとき、「消えた」ように見えていた癌が一気に増えます。
なぜ、抗がん剤が効かなくなるかといいますと、ある程度の期間で癌が抗がん剤に対する耐性をもってしまうのです。

 

これを「がんの薬物耐性」と呼びます。がん細胞も変異を起こし、抗がん剤が効きにくいがんに変化してしまうのです。

 

抗がん剤で一時的に「がんが小さくなっても」、がんは「薬物耐性」を身につけ、必ずといって元の大きさに戻り、さらに大きくなっていきます
そこで、別の抗がん剤を投与して、また一時的にがんが「薬物耐性」を身につけるまで一時的に小さくし・・・という、がんとの「イタチごっこ」が抗がん剤治療の今日の実情なのです。

 

抗がん剤が正常細胞、免疫細胞にダメージを与える

 

三つ目が、抗がん剤が正常細胞、免疫細胞にダメージを与えるため、抗がん剤への「薬物耐性」を獲得し、がんが猛烈に増え始めた時に、まったく対抗できないからと考えられています。

 

がん細胞と戦っているのは、抗がん剤だけではありません。体内の免疫システムも必死にがん細胞と戦っています。

 

この免疫システムを抗がん剤は破壊してしまいます。
そうすると、「抗がん剤」が効かなくなったとき、免疫細胞すら破壊されたがん患者の体内で、癌の増殖を妨げるものは何もありません。

 

一気にがん細胞の増殖が始まります。

 

以上のような理由から「奏効率」が延命につながらないのではないかと考えられています。


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